vol.2は、グッぼるが誕生するずっと前から夫婦ぐるみでお世話になっている大越ご夫妻。グッぼる創設時には何かとお手伝い頂きました。 岩と山歴は、旦那様の久嘉さんは30年以上、奥様の玉代さんはそんな久嘉さんとご結婚されて以来なのでつまり20年以上になるとのこと。おそらくこれまでの人生の半分以上をクライマー(山屋)としてお二人揃って生きてこられているということになります。こうやって文字で書くと改めてその歴史に驚愕です。なぜお二人はこの長きに渡りそしてこれからの未来も、当たり前のように登り続けることができるのでしょうか?

キッカケ

久嘉さんが山の世界に入ったのは20歳位。会社の先輩(ワンゲル部出身)に誘われて彦根から日帰りで行ける鈴鹿山脈の雨乞岳へ。その後貪欲に日本アルプスの山々を縦走し、山屋さんへの道を突き進みます。20代後半には「大津岳士会」に所属。そこで厳冬期の北アルプスなどの山岳でのアルパインクライミングやフリークライミングに精力的な活動をされます。その頃から自然界へ挑戦する為に必要なことは迷いなく練習し心技体の向上に励んでこられたそうです。また久嘉さんはご自身の活動以外にも滋賀県山岳連盟の指導委員長としても登山技術の普及に尽力されています。初級者~冬山登山・クライミングの研修会の講師をし、ご自身が人生をかけてクライミングや登山を通して自然界に挑み続け得てきたその「成果を得る喜び」を後世に伝え続けたい、と仰っています。

玉代さんはそんな久嘉さんとのお付き合いが始まり、ある時クライミングシューズとチョークバッグをプレゼントされ「一緒にやってみよう」と誘われたそうです。元々マーチングバンドやミニュチュア制作など文化系の趣味が多かった玉代さんでしたが、それ以来ずっと久嘉さんと共に山と岩の世界を楽しんでおられます。そして、久嘉さんの山岳連盟の活動もパートナーとしてサポートされています。

自然との調和 

今回の取材の際に久嘉さんから何度となく「自然との調和」という言葉を聞くことができました。お二人にとって山岳活動を実施する目的は、その「自然との調和」であり、クライミングや登山はその手段の一つ。ご夫婦でクライミングのシーズンオフ中も厳冬期には雪山登山や山スキー、夏はテント泊縦走登山、というように一年を通して自然界に繰り出しておられます。それらの活動を通して、自然の偉大さ・厳しさや人間の小ささ、そしてそれを補うための知識と技術の大切さを実感。自然界に受け入れられ調和した瞬間に得られるとてつもなく尊い解放感。それらが正にお二人の最も大切にされている事だそうです。

ギュリッヒの言葉

久喜さんは「Soulful-Bigover]というクライミングを主な活動とするブログを起ち上げご自身の山岳活動の記録を発表されています。その中には 「心・技・体が、その時の自然界に調和した時、その心地良い精神は他には換え難い自分の宝物となる。」と書かれています。

そんな久嘉さんの山岳人生のベースとなっているのは、キャンパスボードの生みの親で世界初の9a Action direct(14d)を初登したギュリッヒ著の「フリークライミング上達法」。この本は25年ほど前に書かれていますが、当時では有り得ないと思われていたトレーニングや理論がぎっしりと詰まっています。私も主人(店長)に勧められて15年ほど前に初めて読みましたが、その心技体全てにおいて明確な表現でその理想を述べている文章力に、感動しました。正にバイブルと言っても過言ではありません。今もふとクライミングに対して不安やモヤモヤ感を抱く時には手にとってしまいます。

もちろん久嘉さんもこの本の愛読者。特に「あとがき」部分にはかなり影響を受けておられるそうです。クライマーとして同じ上を目指す同志には是非読んでほしいという思いから、久嘉さんのブログ「Soulful-Bigover]にも抜粋して載せておられますので、是非ご一読ください。
Soulful-Bigover http://bit.ly/2volYCI

カラダが動く限り「未知なる自然との調和」を求めて

今回の取材の中で私はある衝撃を受けた事実がありました。それは玉代さんはクライミングに対して俗に言う「クライミング愛」を然程抱いていないと仰ったこと。長きに渡って続けているクライミングに然程愛を感じていない??え??なのに何故20年も続けられるの?という私の単純な質問に対して、やはりベースに「自然との調和」が有るから、と玉代さんは答えてくださいました。そしてまた自分の出来ない事が永遠に尽きない所が、クライミングを完全に好きになれない理由でもあり、止められない理由でもあると。「愛」というよりは良い意味での「執着心」が登らずにはいられない原動力の一つになっているのかもしれません。 「クライミング愛」の形は若干違うお二人ですが、これから先のクライミング人生においては同じ感覚をお持ちです。

玉代さん「年を重ね出来ないことが増えても、その時の自分精一杯で自然と調和出来る『本物のクライミング』を続けていきたい。」

久嘉さん「5年前の自分と今の自分は心技体全て違う。そしてこれから先の加齢という大きな変化も全て受け入れて、体が動く限り出来る努力と準備を続けて行きたい。限界グレードを押し上げる事はもちろん大切だが目安であり目標ではない。自然への挑戦をし続けたい。」


人間が老いることも避けられない大きな自然の一部。ただ、より未知なる調和を求めるためには、今の自分には無い何かを得なければいけません。結果的に到達出来なかったとしても、その過程にはきっと何らかの心技体の進歩があるはずです。飽くなき「未知なる自然との調和」を求める大越家の山岳(山屋)活動はこれからも続くようです。