2014年、常世との出会いは強烈で憧れに

常世との出会い6年前、2014年のことでした。初めて恵那に連れて行ってもらい、「ここに5段の課題があるよ。」と教えてもらいました。人生で初めて生で見る5段がそこにはありました。巨石の右端、カンテとクラックを辿るそのラインは当時の僕には強烈に映り、こんなところを登れるのか、これが5段かと圧倒されたことを強く覚えています。この課題をいつか登りたい、そう思いました。

常世

トライ開始も、いきなりハードに感じ見通しが見えない

2020年、今年に入り本格的にトライを始めました。トライ初日はムーブの解明にかなり手こずりました。なんとかワンムーブを残して、それ以外のムーブの解決には成功しました。しかし、どのパートも強烈で繋がる見通しが見えませんでした。出来ていないパートの解決と出来ているパートのより良いムーブ探しがトライ2日目から始まりました。しかし、2日目もこれといった進展はなくまだまだ先は長いと感じました。  

全ムーブ解決すればワクワクしかない

トライ3日目、この日は関東から島谷さんが来ており一緒に常世をトライ出来る機会となりました。セッション効果とは凄いもので、解決していなかったムーブが割とすんなり出来てしまい全ムーブ細切れではあるものの解決しました。また、上部のパートでもより良いムーブを発見出来、一気に常世完登が現実味を帯びてきました。とはいえ、核心は下部のパート。まだまだ一手一手ギリギリで繋げトライができる段階ではありませんでした。その日の夜は夢の課題である常世のムーブが全て解決したワクワクとドキドキでいっぱいになっていたと思います。

完登へ向けてのムーブ練習は地道にひとつひとつ

 4、5日目は全てムーブの練習に費やしました。一つ一つのムーブが強烈でかなり練習に時間を使いました。特に下部は難しいムーブが連続するため、足位置や力の入れ方呼吸のタイミングなど丁寧に丁寧に確認しました。気が付いたことがあれば直ぐにメモし、また動画でも身体の動きをチェックして洗練させていきました。上部も下から来てヨレた状態でもムーブをこなせるように最適化にかなり時間を費やしました。修正を重ねてムーブの精度は上がり、5日目には2分割でばらすことに成功しました。次トライする日は下から繋げようと決めました。この課題は登れる、確信しました。時間の問題だと。ただ繋げには相当の時間がかかることを覚悟していました。

丁寧にひとつひとつ。常世完登

トライ6日目、11月中旬にしてはかなり気温が高いという前日の予報からゆっくりと家を出発し、16時ごろ岩場に到着しました。軽くストレッチを済ませそれぞれのムーブを一通り確認して繋げトライを開始しました。ムーブ確認では安定して一つ一つのムーブをこなすことが出来、良い感触でした。

1トライ目、左手の細ピンチの持ちが甘くカンテ取りで落下。やはり繋げは甘くないかと思いました。

2トライ目、細ピンチの持ちは1トライ目と変わらないくらいでしたが、なんとか耐えて上部に突入。上部のクラックパートに入った瞬間から頭の中は「登れる、登れる」と焦りと緊張とが混ざり合って興奮状態でした。上部の核心であるデッドで左手を出す一手、なんとか呼吸を整え、手を出しました。が、数センチずれてミートせず落ちてしまいました。気が付いたら叫んでいました。この一手が止まればという悔しさと完登がより一層の現実味を見て嬉しい気持ちと。そんな気持ちだったと思います。

 3トライ目、完登のトライ。下部のパートはほぼ完璧に繋がり、2トライ目よりも余力をもって上部に至りました。つい先程の失敗を頭の中で整理して、丁寧にかつ思い切って左手を出し完璧にとらえました。そこからは必死に興奮と上がる息を抑えマントルをこなし岩の上に立ちました。

常世を登って感じること

6年越し、初めて見た時から憧れていた思い入れの強い課題。言葉で言い表すのは難しいですが、とにかく嬉しいです。思っていたよりも早く繋がって驚きましたが、ようやくという気持ちもあります。6年越しだからでしょうか。自分の中で常世という存在がトライしていなかった内にも大きなものとなり僕のクライミングの中に在りました。大学を休学していることもあり、なんとか2020年の内に登りたいと思っていました。生涯ティックリストの1つ、恵那で1番登りたかった課題が登れて自信になったと思います。

まだまだ今シーズンは続きますし僕のクライミングも続きます。常世を1つの通過点としてこれからも頑張ります。


常世完登